アパート等の賃貸物件で自殺が起こった際の対応
 インターネットで仲間を集め、集団自殺を図る事件が多発している。とかく、アパートは現場になりやすい。アパートにおいて自殺という問題に対して、管理業者としては、どのように対応すればよいのか。
●入居者が事件を起こし物件の価値を下げた
 もし、入居者が自殺したために、その後空室が続いたとしたら、建物の価値を著しく下げたとして、損害賠償を遺族もしくは法人契約の場合は会社に請求することができるのだろうか。
 現在、年間3万2,000人以上の人が自殺している。年々数字は増えており他人事ではない。
 賃貸物件の判例は極めて少ない。売買の場合では、例えば、昭和37年、大阪高裁が「家屋として通常有すべき住み心地のよさを欠くときもまた、家屋の有体的欠陥の一種として瑕疵と解するに妨げない」ものとし、瑕疵担保責任による解除の可能性を認めているが、この大阪高裁の主旨は、賃貸物件についても当てはまるといえるようである。
 そこでまず、自殺したことが原因で新規の入居者が決まらないということを立証する必要がある。
 もともと空室の多かった物件では、必ずしも自殺が原因だとは言い切れない。明らかに事件が起きたことによって、これまで空室がなかったにもかかわらず、急に決まりにくくなったという事実が重要である。築年数による空室の可能性もあるからである。
●賠償金を相続人保証人に請求可能
 立証された場合、相続人である家族に賠償金を支払ってもらうことができる。法人契約していた場合も、法人は入居者が履行補助者となるので、債務不履行として請求することができる。また、保証人は、賃借人の用法義務違反の損害賠償責任をも保証するため、損害賠償金を請求することができる。
 ただし、ここで問題になるのは、どのくらいの金額を請求することができるかである。
 例えば、一つの目安として、事件後10年間は、住み心地の良さを欠くとして瑕疵担保責任を追求することが可能だが、10年間入居者が決まらないという可能性を立証することは難しい。そのため、10年間分の家賃を請求することは困難である。
 そのため、あらかじめ契約書の特約事項に「万が一、自殺行為があった場合は、違約金として○円を徴収する」という事項を明記するのもひとつの手である。ここで気をつけたいのは、この違約金の額を一方的に賃借人に不利な数字を掲載すると、消費者契約法にひっかかってしまうことである。そのため、3ヶ月から半年分の家賃が妥当だと考えられる。
 ちなみに次の入居者には、「自殺があった物件」であることは必ず告知しなければいけない。目安として、事件後5年間位は新規入居者には告知する必要があるという。
●建物の汚損分は遺族が負担する
“自殺したことによって入居者が決まらない”という目に見えない部分での損害賠償については、請求しにくい。一方、自殺した際に汚損した内装などの原状回復費用は請求できる。
 死体が長期放置されたままで腐乱すると、体液や悪臭で惨さんたる状態になる。ここまでくると、床、天井の張り替えも含めた全面改装が必要になる。
 さて、自殺があった場合、本当に入居者が決まらなくなるのだろうか。
 単身向けでは、家賃を半額にすると、以外と若いフリーターが入りやすいという。「お祓いもしてあるし、自分はほとんど気にしない」とあまりお金を持たない若者なら決まるようである。ただし、ファミリーでは過去に何かある物件の入居は避けるため、厳しそうだという。
 管理業者も明日はわが身。できるだけ被害は小さくしたいものである。 
                 (全国賃貸住宅新聞より)