手付金なしの売買契約では
手付放棄による契約解除ができない!!

  小川さんは業者Aの媒介で中古マンションの購入契約を締結することにしたが、手付金に充てる予定の定期預金の満期日まで契約締結を待ってほしいと申し出た。これに対し業者Aは、「それならば手付金なしで売買契約してはどうか」と提案、小川さんはこれを受け入れた。しかしここに大きな“落とし穴”があった。 小川さんは契約を締結して2週間後、突然に会社から遠方への転勤を命じられ、Aに契約の解除を申し出た。しかし、Aから「契約を履行しないと違約金が発生する。」と、契約約款に書いてある売買代金の3割を請求されてしまった。手付金なしの売買契約では手付解約ができないので、違約金を支払わなければ解約できないというのだ。
苦情の内容
  小川さんは、業者Aの媒介で中古マンションを購入すべく売買契約を締結した。
  しかし手付金に充当する予定の定期預金の満期日を勘違いしたので、契約予定の変更をAに申し出た。 その際Aは、契約日を延期するよりも手付金無しで契約しておいて、定期預金の満期日に引き出したお金を中間金として支払う内容の契約を提案し、小
川さんもこれを了承した。 
  売買契約締結後、小川さんは地方へ転勤を命じられ、悩んだ末、売買契約を解除したいことをAに申し出た。ところが、手付金無しの契約であることから手付金放棄の契約解除ができなくなり、違約金を支払わなければ解約できないというのだ。
業者の言い分
  確かに小川さんに、手付金無しの売買契約を勧めたが、契約書の約款も事前に読み合わせをしており、内容を理解したものと思い媒介した。契約を履行しないのは小川さんであり、約款に基づき違約金を支払っていただきたい。
紛争相談窓口の考え
  一般的には、契約は当事者の自由な意思に基づき契約内容について合意されたときに成立するものとされている。(諾成契約)
 契約の方式も自由であり、売買契約も締結するにあたって、手付金を授受するか否かも自由である。
  しかし一般的には、不動産の売買契約においては、締結に際し手付金を交付して行なわれ、手付契約もそれに付随するものとされている。
 本件のように、手付金無しの売買契約は、手付放棄による解除をすることはできず、当事者の合意解除のほかは、債務不履行により、相手方から解除されるのを待つしかない。
  本件の小川さんも一般消費者であるから、手付金を交付しない場合の契約解除について、契約書の約款を読み合わせしただけでは、恐らく小川さんは、理解しなかったと思われるので、媒介業者の説明不足を否定できない。
本案件の結末
  媒介業者が交渉した結果、売主は代金の一割を買主が支払うことで解約に応じた。
トラブルから学ぶこと
  不動産の売買契約で一般消費者が当事者となる場合、例え少額でも手付金を交付することは、契約解除の場合のトラブルを少なくすることになる。
  また契約締結を急ぐあまり、当事者に詳しく説明せず、手付金が無い契約等一般的でない媒介を行なった場合、業者の助言義務違反として債務不履行を問われることにもなるので、当事者が十分納得したことを確認し行なうべきである。